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IR情報研修・講座開催報告

サウジアラビアの重鎮から招聘を受け、株式会社One to One福祉教育学院 代表取締役根津良幸がリヤドへ医療介護事情の視察に行ってまいりました


サウジアラビアの重鎮から招聘を受け、株式会社One to One福祉教育学院 代表取締役根津良幸がリヤドへ医療介護事情の視察に行ってまいりました。

1. これまでの経過経緯

(1) 背景

根津先生は日本の超高齢社会における介護のインフラ整備に関わってきた立役者である。根津先生が編み出した介護技術は介助者の腰を痛めずに移動、移乗が出来る世界で唯一つの技術であり、介護を受ける患者が痛い思いをせずに安心・安全に介護できる唯一無二の技術である。

医療の質と患者安全を保証するJCI認定を受けた大学病院を有する埼玉医科大学が根津式介護術を埼玉医科大学全グループに導入し、退院指導・教育、医療介護従事者の介助技術としての標準化を行ったことにより、根津式介護術は世界で初めて医療エビデンスを持った介護技術となった。

人の手で介助することを諦め、機械による介助へと舵を切っていた世界の大多数の国々が、腰を痛めずに人の手で介助可能な根津式介護術に驚愕し、注目を浴びることとなった。

(2) モナコ公国への招聘

2022年6月、高齢社会を迎えているモナコ公国の王室関係者より、根津先生の介護技術(根津式介護術)ならびに日本の介護(機器を含む)の導入、教育指導を目的に、根津先生がモナコ公国へ招聘された。モナコ公国は医療介護立国として今後歩んでいくことを明確に打ち出しており、日本の介護インフラ整備の立役者である根津先生の指導のもと、介護・リハビリ施設などのインフラ、介護教育体制を築いていく予定である。

(3) ドバイへの招聘

2022年7月には、避暑でドバイに滞在していたサウジアラビアの重鎮によって根津先生が招聘され、介護技術指導ならびに介護施設、介護教育施設づくりへの協力を要請された。今回のサウジアラビア(リヤド)への招聘は、根津式介護術ならびに日本の叡智を結集し西洋と東洋の医療を統合した医療介護包括システムをサウジアラビアで本格的に展開していく話を進めるためのものであった。

2. サウジアラビア(リヤド)における活動報告

サウジアラビアの重鎮より根津先生が招聘を受け、2023年1月22日より26日にかけてリヤドに訪問した。

(1) リヤド1日日(1月23日)

視察先①:Naizak

医療介護機器のみならず、検査情報管理システム、電気通信、油田などをてがける中東最大のサプライ会社。

<面談内容>

根津先生の紹介、根津式介護術が医療エビデンスをもった技術でありサウジサラビアへ今後普及していく予定であること、日本の医療介護機器の会社とはすぐにコンタクトを取れる関係にあることを伝えた。また、日本はどの国よりも先に少子高齢化の波が押し寄せ、僅か20数年間で介護の問題を解決せざるを得ない状況となり、介護インフラ整備を行ってきたため、介護におけるあらゆるノウハウを持っている。従って、サウジアラビアが本気で介護インフラに乗りだすのであれば、助力することは可能であることを相手に伝えた。

<総括>

日本が介護では最先端であり、日本の介護機器が世界トップクラスであることを再確認した。介護機器に関してはシャワー浴と介護用ベッドに特に注目をしていた。

視察先②Integrated Treatment Center

サウジアラビアで唯一のリハビリテーション専門病院。

Integrated Treatment Centerの夜の外観

Integrated Treatment Centerにてミーティング

<面談内容>

リハビリテーション専門病院の責任者からサウジアラビア唯一のリハビリテーション専門病院としての紹介があった。老人ホームは1つも存在していないこと、病院から在宅へ移行する時の指導・教育システムが確立されておらず、在宅介護は今後の課題であることが挙げられた。

根津先生から、治療が終わっても機能低下、機能欠損によって機能改善がされていない状態で自宅に戻ることが、患者にとってどれだけの苦しみとなるか、介護の術を知らないで家族が介護をすることがどれだけ悲惨な状況を生むか、の説明があり、みな納得していた。

根津先生が根津式介護術の講義を行ったところ、病院責任者らは力を使わず腰に負担のかからない介護技術に驚愕し、みな時間を忘れて食い入るように講習を受けていた。リハビリテーション専門病院の責任者が直接根津式介護術を体験し、「是非、根津式介護術をサウジアラビアで普及していただきたい」との強い要望があった。

その後、リハビリテーション専門病院の施設内見学を行った。施設にはリハビリ機器などのハードは揃っていることが確認できた。

根津先生による根津式介護術の指導風景

<総括>

根津先生の腰に負担のかからない介護技術の普及ニーズがとても高かった。病院から在宅へ移行する際に必要となる介護インフラ整備がサウジアラビアでは急務と思われた。次回訪問時、根津式介護術の技術指導をして欲しいとの要望が強かった。

Integrated Treatment Center正面玄関にて

尚、リハビリテーション専門病院の責任者より、後日、下記内容の感謝のレターが届いた。

「友よ、あなたからの連絡をとてもうれしく思います。根津教授や博士などの象徴的な人に会うことは、私たちにとって大きな名誉と喜びでした。根津教授が障害を克服して介護技術を編み出した誕生秘話は、世界中の何百万人もの人々にとって本当に深く感銘を受けるものであり、主にここサウジアラビアでは、人ひとりひとりが自立し、生活の質を向上させるのに役立つ大きな可能性を秘めています。根津教授のテクニックと方法のシンプルさは信じられないほどです。私は個人的にもっと学ばせていただきたい。私たち専門知識チームは、最小限の労力で障害者を安全に移動、移乗できる根津式介護術が高く評価されることを強く信じています。」

(2) リヤド2日目(1月24日)

リヤドにある5つの病院を訪問し、各病院の代表者らと面談を行った。

視察先①:DR. MOHAMMAD ALFAGIH病院

渡り廊下を挟んで外来棟と入院棟からなる350床の総合病院。

DR. MOHAMMAD ALFAGIH病院玄関前

最上階ミーティングルームにて名刺交換

<面談内容>

病院責任者によって入院棟ならびに外来棟を案内された。病院責任者らは根津式介護術に高い関心を寄せた。院内で車椅子からの立ち上がりなどの根津式介護術のデモを行った。恰幅のよい病院責任者が軽々と立ち上がらされているところを目の当たりにして、根津式介護術が彼らの知っている従来の介護技術とは一線を画していることを納得していた。

根津先生が根津式介護術について講義

<総括>

サウジアラビアの医療水準、医療機器などのハード面に関しては日本と遜色ない印象を受けた。彼らにとってニーズが高かったのは根津式介護術であり、根津式介護術が腰に負担のかからない介護技術であることを認めていた。シャワー浴や温浴シャワー椅子は彼らにとって初めて見るものであり、高い関心を示していた。

視察先②:Kingdom病院

リヤド北部に位置する私立病院。

写真参照:https://kingdomhospital.net/en/

<面談内容>

根津式介護術が世界で初めて医療エビデンスをもった介護技術であり、腰に負担のかからない唯一無二の介護技術であることの説明を行ったところ、サウジアラビアにおいては腰を痛めない介助技術などはなく、今後のサウジアラビアにおける介護において、とても重要な要素となるとの発言があった。今後、サウジアラビアで根津式介護技術を普及していくつもりなら、我々が帰国後もテレビ会議などを行って協力できる旨が伝えられた。

<総括>

在宅ケアに注力している病院であり、介護技術はもとより最先端の日本の介護教育、介護インフラ整備にも関心が寄せられており、とても協力的な対応であった。

視察先③:King Faisal Specialist病院

リヤド市内中心部にあり、埼玉医科大学国際医療センターと同じJCI Academicバージョンの認定を受けている病院。1975年開設。

King Faisal Specialist病院

病院ロビーにて

<面談内容>

一人一人の部門長が自己紹介をし、歓待の意を表明してくれた。根津先生が脳梗塞で倒れ、家族が生きる術として根津式介護術を編み出していった誕生秘話を語ったところ、全員がしんと静まり聴き入っていた。根津先生の話を終えて、円卓を囲んで座っていた部門長達が根津式介護術の誕生秘話に感銘を受け、腰に負担のかからない介護技術であること、そして患者が安心・安全に介護を受けられることを理解し、最大限の賛辞をおくってくれた。彼ら一同から、是非、次回サウジアラビアに来る時は根津式介護技術を実際に体験する時間をつくって欲しいとのコメントが寄せらた。

「家族が介護で腰を痛める苦しみを是非取り除いて差し上げたい」、「日本が少子高齢問題にぶつかり、僅か22年という短い期間で介護インフラを整備せざるを得なかった苦しみを、今後サウジアラビアが直面する時に、サウジアラビアの力になって差し上げたい」との根津先生の発言にみな心を打たれており、サウジアラビアにおける今後の介護問題解決のためにも協力を惜しまないとのことであった。

<総括>

King Faisal Specialist病院は歴史があり、世界最高水準の患者安全目標を満たしたJCI認定病院であるため、各部門長達が患者安全を担保することの重要性を理解していた。彼らは根津式介護術が腰に負担をかけないばかりか、患者転倒予防となる技術であることを理解し、さらには標準化された介護技術が存在していないことの危険性を彼らが分かっているだけに、医療エビデンスに裏付けられた根津式介護術の重要性も理解したものと思われる。次回、サウジアラビア訪問時に、根津式介護術の実技講習が実現する可能性が大いに高まった瞬間であった。

視察先④:New You Medical Center

美容、形成外科に力を入れている私立病院。

New You Medical Center正面

<面談内容>

西洋医学と東洋医学を融合した医療介護包括システムによるリハビリテーションならびに日本の医療介護機器について説明を行った。日本の医療介護機器、特にサウジアラビアに入っていないものに高い関心を寄せており、医療介護機器導入におけるアドバイスなどは喜んでするとのことであった。

<総括>

日本の信用、信頼ある医療介護機器に関心を示しており、導入における助言は惜しまないとのことであった。

視察⑤:DR SULAIMAN AL HABIB病院

リヤド中心部に位置する私立病院。1995年開設。

写真参照:https://hmg.com/en/Medical-Facilites/Pages/default.aspx?itemid=13

<面談内容>

根津先生より根津式介護術の誕生秘話が語られた。日本で介護保険制度が施行される前に脳梗塞で倒れ、左半身麻痺となったこと、話すことも食べることも、寝返りを打つことも、自分で排泄すら出来なくなったこと、その時、子供が生まれたばかりの生後4ヶ月であったこと、妻が重度のヘルニアであり、生まれたばかりの赤ちゃんを抱えながら片腕1本で介護をせざるを得ない状況に陥ったこと、根津式介護術は生きる術として編み出され、根津先生の介護度別、ヘルニアの妻の腰の状態別に存在すること、世に広めるために編み出したわけではなかったこと、などが語られた。

日本で根津式介護術の普及をしてきたが、今度はサウジアラビアから世界に向けて介護で苦しんでいる人々を助けるために根津式介護術を広めていくこと、まずは介護で腰を痛めているサウジアラビアの人々の苦しみを取り除くために来たことを根津先生が告げた。必要であれば助力させていただくとの根津先生の言葉に対して病院責任者から、「根津式介護術の誕生秘話を聞いてとても感銘を受けた。是非サウジアラビアの介護で苦しむ人達のために力を貸して欲しい」とのコメントがあった。

根津先生に対して「脳梗塞のリハビリ、そして今度はがんでリハビリを経験して、今のリハビリについて考え方が変わったか?」との質問があった。根津先生より「私はステージ4のがんで大胸筋皮弁移植術を受けており、右手が動かせる状態でなかった。リハビリを行ったが、リハビリには痛みが伴う。痛みが強いために約7割の患者がリハビリを断念してしまう。大胸筋を失った人間は通常90度までしか腕が上がらないが、私は独自にリハビリを見直して行い、今では上まで腕があがるようになった。リハビリで大切なことは①がんの痛み、神経の痛みを緩和することで、もっとも効果があったのは東洋医学の鍼灸とツボマッサージであった。次に大切なのは②自重の負担なくリハビリを行うことで、自重の負荷をなくしてリハビリを行うことで可動域を広げることができる。そして③東洋医学と西洋医学を融合させた医療介護包括システムによってリハビリを行うことが最も大切である。」との回答があった。

<総括>

頭で考えた訳では無く、生きる術として編み出された根津式介護術に高い関心を示していた。次回のサウジサラビア訪問に向けて、オンラインミーティングを行い、次回は根津式介護術の実技講習が行えるように調整することとなった。根津先生のがんのリハビリに対する話を聞いて、彼らのがんのリハビリの概念が変わったようであり、機能改善、機能回復のために西洋と東洋医学を融合させた医療介護包括システムの必要性、重要性への理解を示していた。

(3) 介護機器について

医療機器はほぼ充実している状況であったが、介護機器で特に日本製のものは目にしなかった。

シャワー浴のような日本特有のものは存在しておらず、みな非常に高い関心を寄せていた。ベッドに関しては入院で使う医療用ベッドは充実しているが、サウジアラビアでは「医療用」「介護用」という区別がなく、自宅でも医療用ベッドを使用している。日本の在宅で使用する介護ベッドには非常に高い関心を寄せていた。

3. まとめ

今回の視察を終えて、医療は充実しているものの、介護に関する課題や介護のインフラ整備はこれから取り組む状況であることがうかがえた。

日本は有史以来、どの国よりも早く少子高齢化の波にさらされ、否応なく僅か23年(介護保険制度が施行されたのが2000年)という短い期間で介護のインフラ整備をせざるを得ない状況になり、様々な介護問題に直面する中で、地域包括ケアをつくるなどして介護に関する課題解決に取り組んできた。

現在、世界中の国々が、今後自国で直面するであろう高齢化問題に備えるべく、日本の動向を注視している状況である。今後は間違いなく介護、福祉の時代となることを実感した。

(報告者 埼玉医科大学副医学部長)


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