高齢者によくみられる症状や病気(8):前立腺がん
みなさま、こんにちは。
今まで症状を中心に解説してきましたが、今回は病気についてブログを書こうと思います。
今回のテーマは「前立腺がん」です。
前立腺は男性にしかない臓器です。従って、前立腺がんになるのは男性だけです。主に精巣(睾丸)から分泌されている男性ホルモン(テストステロン)が前立腺がんを悪くします。
それ故、昔は前立腺がんになったら精巣を摘出するという治療が行われていました。昔、宦官(中国など男子禁制の後宮に仕えていた官吏)は去勢されていたので、前立腺がんにはならなかったと言われております。しかし、男性にとって両側の精巣をとられて去勢されるというのは、あまり嬉しいことではないですよね。
その後、医学の進歩のおかげで前立腺がんになっても去勢せずにホルモン療法を受ければ男性ホルモンを抑制することが可能となりました。
前立腺がんの症状は?
1980年代頃までは、「排尿障害や血尿といった症状で病院に受診して前立腺がんが見つかった」ということも多々ありましたが、1990年代に入り検診などの普及に伴って、前立腺がんの症状が全くないにもかかわらず前立腺がんが見つかるケースが増えてまいりました。
早期発見ができることは良いことですが、その一方で昔は前立腺がんになったとしても気付かずに天寿を全うしていた人達も多くいらっしゃいました。前立腺がんになったとしても、患者さんにとって治療をした方が幸せなのか、そのまま経過観察にした方が幸せなのか、その判断に患者さん自身が悩む時代が訪れたのです。
患者さんにとって「何が大切なのか」を見極め、治療オプションを提示して患者さんにとっての最適な治療法を提供できるかが専門医の腕の見せどころです。
前立腺がんの治療
前立腺がんの治療は大きく分けて①手術、②放射線治療、③ホルモン治療があります。
私が医師になった1990年代の始めの頃、手術に関してはお腹をメスで切開する「開腹手術」が主体でしたが、その後、お腹に5mm、10mmといった穴を開けて内視鏡で手術をする「腹腔鏡手術」へと主体が移り、今ではロボット手術が主体となりました。放射線治療も医学の進歩とともに格段に精度が高くなり、副作用も減りました。
今なお、医学の進歩は続いております。もしかしたら将来、手術や放射線治療といった侵襲の高い治療をしなくても前立腺がんが治る時代がくるかもしれないですね。