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認知症の両親との同居生活体験記

認知症の両親との同居生活体験記(5):父の認知症のはじまり


認知症とのかかわり方について、自分自身の「認知症の両親との同居生活体験記」を交えながらブログを書いてまいります。

認知症の両親との同居生活体験記(5):父の認知症のはじまり

これまで母のことを書いてきましたので、今回は父のことを紹介しようと思います。

父は某塗料会社に勤務し、定年を迎えた後は数年だけ別の会社に勤めておりましたが、その後は働くことをやめました。いわゆる年金生活に入りました。父はとても几帳面であり、誰も見ていないとしても間違ったことを決してしないタイプでした。周囲からは融通があまり利かないと思われていたのではないかと思います。

私が幼少の頃は、夏休みには車で2,3時間はかかるのに毎週のように海へ連れて行ってくれたことを記憶しております。仕事を引退して、自宅にいる時間が増えてくると、もともと口数が少なかったのですが益々口数が減り、物静かになりました。

父は近くの図書館に出かけることが慣例となっていましたが、出不精で多くの人と接することがあまり得意ではありませんでしたので、次第に家にいる時間が増えてきました。「朝、起きて、朝刊に目を通してテレビをみる。夕刊が届いたら夕刊に目を通して、またテレビを見る。」というパターンが出来上がってきて、次第に図書館はおろか殆ど外出することがなくなりました。

あまりにも家の中にばかりいるので、心配になった私は父に「散歩でもしてきなよ」「図書館に行ったらどう?」と声かけをしておりましたが、その時は「そうだね」「行ってくるよ」と返事をするのですが、実際には殆ど出かけませんでした。

ある日、私が仕事から帰ってきた時に父がいつものようにテレビを見ていました。何かの特集のような番組がテレビから流れていたので、「どんな内容の特集なの?」と父に何気なく尋ねました。父は思っていることを言葉になかなか出来ないのか、たどたどしく言葉が口から出てきて、すぐには返事がかえってこない状況でした。結局、「なんて言えばいいんかなぁ」「どう言えばいいんかなぁ」と繰り返し言うだけで、テレビの内容を私に伝えることが出来ませんでした。

その時、「父の口からなかなか言葉が出てこなくて、話すのに時間がかかる。父の言っていることが今ひとつよく分からない」ということが深刻化してきていることに気付きました。

いつから父の口から言葉が出にくくなったのか、いつから思っていることを父は言葉に出来なくなってきたのか…、父に変化が起きたはっきりとした日時は分かりませんが、徐々に徐々に父の様子が変わってきていることが気になり始めました。当時は父が認知症とは思ってもおりませんでしたが、今思えば徐々に認知症の症状があらわれ始めてきたのだと思います。


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