認知症の両親との同居生活体験記(3):母に起きた異変
認知症とのかかわり方について、自分自身の「認知症の両親との同居生活体験記」を交えながらブログを書いてまいります。
認知症の両親との同居生活体験記(3):母に起きた異変
認知症が進む前、私の母は近くのスーパーに買い物へよく出かけておりました。当時は料理をすることもまだ何とか出来ておりました。
ある日、冷蔵庫を開けるとヨーグルトが沢山入っておりました。我が家では毎朝、ヨーグルトを食べる習慣がありましたので、当初は「母が少し多めに買ったのかな」程度にしか考えておりませんでした。しかし、徐々に冷蔵庫が同じ物でいっぱいになってきました。母が買い物へ行く度に、ヨーグルト、豆腐、焼きそばを毎回買って来るようになったからです。後、余談ですがバームクーヘンも頻回に買ってくるようになりました。
私は「どうして冷蔵庫にある物を買ってくるの? 買い物に出かける前に冷蔵庫の中をちゃんと確認してから出かけてよ!」と母に何度も言ってしまいました。
母は「分かった。次はちゃんと冷蔵庫を見てから行くわ」と返答しておりました。
ですが、結果は同じで、食べきれない同じ食品が冷蔵庫にあふれかえるようになったのです。
次に、私は母に「買い物には出かけないで。僕が食材を用意するから!」と伝えました。母が買い物に出かければ必ず同じ物を買ってしまうからです。こうして、定期的に食材を配達してもらうようにしたのですが、それでも母はまたいつものように買い物に出かけては同じ物を買うということがしばらく繰り返されました。
「買い物には出かけないで」と言う私に対して、母は「買い物にはもう行かない」と毎回答えており、最後には父に「私が買い物へ行こうとしたら止めて」とまで言っておりました。
自分に異変が起きていることに気付いている母は、同じ物を買いたくないのに毎回同じ失敗を繰り返してしまい、どれだけ情けない思いになったことか、息子に言われても簡単なことも出来ない自分自身をどれだけ屈辱に感じたか、自分がこの先どうなるのだろう、家族に迷惑ばかりかけるのではないか…、そんなふうに母を追い詰めてしまった自分自身がとても恥ずかしいです。
どうして責めることばかりに目がいってしまったのだろう…、母が出来ることを褒めることに目を向け、これまで育ててくれた恩返しが当時出来なかったことが悔やまれます。
母がどうして焼きそばとバームクーヘンを頻回に買うようになったと思いますか?
ヨーグルトと豆腐は母が日常の食卓でよく出してくれていたものです。今は両親と私の三人暮らしですが、私には姉がおります。母は姉が子供の時に焼きそばとバームクーヘンをよく食べていたことを覚えていたのです。時々、我が家へ遊びに来てくれる姉を思って、姉がいつ遊びに来てくれてもいいように焼きそばとバームクーヘンを買っていたのだと思います。
母が同じ物を繰り返し買ってしまうという失敗をするのは、母自身が食べたいからではなく、子供達である私や姉に食べさせてあげたいという想いからくるものだったのです。