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認知症の両親との同居生活体験記

認知症の両親との同居生活体験記(10):認知症と区別すべきもの①


認知症とのかかわり方について、自分自身の「認知症の両親との同居生活体験記」を交えながらブログを書いてまいります。

認知症の両親との同居生活体験記(10):認知症と区別すべきもの①

第1回のブログで認知症と加齢による‘もの忘れ’との違いを見分けるポイントを紹介しましたが、加齢による‘もの忘れ’の他にも認知症と区別することが大切な病気があります。それは、①せん妄と②うつ病です。

今回のブログでは認知症とせん妄の違いを見分けるポイントを紹介します。

せん妄とは?

せん妄とは一種の意識障害のことをいいます。幻覚を見たり、落ち着きがなく不穏行動をとるなどの症状をきたします。「今日は何日だっけ?」「ここはどこ?」といった日時や場所が分からなくなるのもせん妄の症状です。認知症があるとせん妄にもなりやすいと言われております。高齢者が病院で手術を受けて集中治療室に入っていると幻覚、妄想などの症状が出ることがしばしばありますが、これもせん妄です。

認知症とせん妄を見分けるポイント

認知症とせん妄を見分けるポイントを表にしました。

認知症 せん妄
発症時期 あいまい 特定できる
発症の仕方 ゆっくり 急激
経過 慢性的に進行することが多い 一過性で回復することが多い
意識 おおむね正常 障害あり
思考 人とは話がかみ合わないが、自分自身の中では話がかみ合っていることが多い 無秩序、支離滅裂

一見、認知症とせん妄は症状が似ておりますが、上の表を見ていただければ分かる通り、全くの別モノです。

今回のブログでお伝えしたかったことは、病気の知識を覚えることではなく、「認知症と思っても、実は認知症ではないことがある」ということです。

実例でこういうことがありました。夫が認知症になったと思って、妻が夫を外来に連れてきました。画像検査の結果、認知症ではなく脳出血でせん妄になっていることが判明しました。すぐに緊急手術をして、この患者さんの意識は正常に戻りました。もし、妻が夫のことを認知症になったから仕方ないと決めつけていたら、そしてなかなか外来に受診をしなければ、助かる命も助からなかったことになります。

認知症だと決めつける前に、本当に認知症なのかを疑い、何らかの原因でせん妄になっている可能性があるかも知れないということを心に留めておいていただきたいと思います。また、認知症の人がせん妄になることも少なくありませんので、注意が必要です。


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